不動産コンサルティング
不動産コンサルティングの実務について
第4章 所要資金の調達方法 4-2
(2) 所要資金項目の解説
A. 土地取得費
通常は自己所有の土地で有効利用事業を行うため土地取得費はかからないが、隣地を一部買い増しして事業化を行う場合など、土地取得費が必要となるケースがあります。
しかし、有効利用事業の収益から投下資金の回収を図るため、買収に充当できる金額は限られます。
B. 取壊し費・解体費
対象地の上に古い建物、建築物などがある場合、除却のための取壊し費・解体費を資金計画に盛り込むが、この費用は、対象となる建物の構造や規模によって様々です。解体が簡易なもので費用も小さければ、建築工事費の中に一括して見積もることも可能です。
また、過去の利用形態によって土壌汚染がある場合には、土壌改良等のための費用が生じます。
C. 測量費・調査費
土地の面積が確定しなければ建物の規模が確定できないため、土地の実測は、事業計画を実行に移す際に必ず行うべき作業です。実測に当たっては、隣地との境界の確認、道路との境界の確認が必要となります。
大規模な建物の建設を計画する場合は、耐震性を中心とする地盤調査、土壌汚染・地下水の汚染など土地の環境調査、所在地によって遺跡発掘などの地質調査が必要です。また、大型店舗計画では乗用車利用による渋滞発生などの交通量調査、高層建物を建設する場合は電波障害発生の調査等も必要になることがあります。
D. 設計・監理費
建築工事費と関連しており、見積もりの方法としては次の二つがあります。①は、発注側の予算枠を基にした見積もりであり、②は受注側のコスト及び適正利潤を基にした見積もりといえます。
① 資金計画の初期段階で想定する場合は、建築工事費の3~10%など、建築工事費に対する割合で把握します。
② 積算による方法で、必要人数×延日数という計算方式を基礎として、人件費、実費、技術料、監修料などを加算します。
E. 建築工事費
主要構造体、規模、用途、仕様の品等(グレード)、施工の質、地盤、地下利用の有無などによって異なるが、概算見積りにおいては、主として主要構造を基に単位面積当たりの標準的な数値を採用し、これに計画建物の面積を乗じて建築工事費を試算するのが一般的です。
建築工事費は事業資金の大部分を占めるため、金額如何より計画の実現可能性が左右される最も重要な項目です。従って、事業収支計画において調達資金が無理なく返済できるようにするためには、稼働後の収入に見合う工事費の規模とする必要がある。なお設備機器類については、ある程度将来の対応を見据えた導入を図ると共に、陳腐化のリスクや入替えの可能性等にも配慮すべきです。
F. 登録免許税
土地を取得した場合の所有権移転の登記に伴う登録免許税は、対象となる土地の固定資産税評価額を課税標準とし、これに定められた税率を乗じて求められます。
建物は新築に伴い、表示登記と所有権の保存登記が必要となります。課税標準の価格の概算値は建築代金の60%~70%を課税標準額と想定し、これに所定の税率を乗じて求めます。なお対象地に取壊しを要する古い建物がある場合は、滅失登記を行わないと新築物件の表示登記はできません。
また、事業資金調達のために銀行から借入を行い、対象土地・建物に抵当権を設定する場合、登録免許税は、借入極度額(債権額)を課税標準として、これに税率を乗じて求めます。
G. 不動産取得税
事業化に当たって取得する土地がある場合の不動産取得税も、登録免許税と同様に、課税標準額は固定資産税評価額です。新築物件についても登録免許税と同様です。新築住宅(含、賃貸住宅)には税率軽減等の特例があります。
H. 事業所税
事業所税は、事業所や事業用の建物を新築・増築した場合にその建築主に課税される(このほか、事業を行う者に対して課税されるものがあります)。
I. 近隣対策費
近隣対策費には、日照時間に影響を与えることによる日照補償費、工事期間中の騒音・振動・粉塵・工事車両通行などの影響に係る工事迷惑料、周辺のテレビ電波受信などに障害を生じた場合の電波障害対策費、工事の結果近隣家屋に傷みが生じた場合の家屋補償費などがあります。
一般に建物の規模が大きくなるほど近隣対策の及ぶ範囲や影響の度合いが大きくなるが、実際にかかる費用は案件ごとに千差万別であるため、資金計画では、建設工事の規模や立地条件、地域の特性に応じて所要額を想定して見積もらずを得ません。
J. 不動産コンサルティング報酬
報酬額の算定については、第1章「2業務委託契約」の項を参照。
K. 不動産媒介手数料等
資金調達のために保有不動産の一部を売却する場合や計画地として隣地の一部を取得する場合には、不動産媒介手数料を見積もっておきます。
L. 建設期間中の地代・公租公課
計画地が借地の場合、建物建設期間中の地代の負担分は、所要資金として計上します。同様に建設期間中の固定資産税・都市計画税も所要資金として計上します。
建設期間中の支払い地代や公租公課は、建物の原価として計上し、賃貸事業開始後は減価償却の対象となります。
建物が竣工して賃貸事業が開始された後の費用は、収入に対応する支出項目として期間費用となります。
M. 建設期間中の借入金等の利息
工事代金等の支払いに応じて分割借入することが通常であるため、建設期間中の金利は、借入残高に合わせて求めることになります。
建設期間中の支払い金利は建設所要資金に繰り入れられます。
N. その他の費用
事業計画においては、不確定要素がゼロとなることはなく、そのためには予備費を計上して万一の事態に備えます。予備費は全体事業費の○%というように、当初想定時には大まかな数値を計上しておきます。
コラム 庭石の除去に2,000万円